教育分析
教育分析とは?
教育分析とは、心理カウンセラーがベテランの臨床心理士などからカウンセリングや心理療法、精神分析を受けて、自分自身を振り返り、葛藤やコンプレックス、性格、無意識などを理解してコントロールできるようにする訓練のことです。また、心理カウンセラーが教育分析のなかで自分の問題を解決させることも目的とされています。
心理カウンセリングは知識と技術があればできるというものではありません。カウンセリングを受けた経験のない人が心理カウンセリングを行えるはずがないのです。心理カウンセラーは常に自分の心を磨く必要があり、自分の心がどうなっているのか理解を深めておかなければなりません。そうした取り組みの一つが教育分析というわけです。
教育分析歴
私がはじめて教育分析を受けたのは、某カウンセラーの専門学校に入学して心理カウンセラーの技術を学び始めた頃でした。最初の頃は自己分析を目的として週1回の割合で受けていたのですが、さすがはベテランのカウンセラーだけあって、私自身も気づいていないことまで気づかされてしまい何度も凹みました。私のたった一言だけで、無意識の感情をえぐり出されてしまったという感覚でした。しかし、そうやって自分の無意識をむき出しにする方法を学ばせていただいたおかげである程度の自己分析技術が向上したといえます。
続いて月2回の割合で受けるようになった頃、今度は自分の価値観を砕いて再構築させることによって、あらゆる視点から物事が見えるような訓練を目的としました。特に私は人を平気で裏切ったり騙したりする行為が絶対に許せないといった純粋すぎる心を持っていると言われていたのですが、ベテランのカウンセラーから「純粋だけではこの先続かない」、「そういう許せない人とでも話ができるようにならないといけない」、「その心は別の形にして残しておけばいい」とのご指摘をいただき、少し時間はかかりましたが純粋である部分の価値観も砕いて再構築させました。それにより「別の形にして残す」という意味が理解できるようになり、凶悪な犯罪者であっても話せるくらいには成長したように思いました。
その後、月に1回の割合で受けるようになり、最近では忙しくてあまり受けなくなりましたが、教育分析は永遠に受けるべき訓練だと考えています。
教育分析の実施
私は恋愛心理や男女関係を専門とした心理カウンセリングを長く続けていたのですが、一時期、恋愛観分析というサービスを実施していました。恋愛観分析とは、自分の恋愛や異性に対する考え方などを理解することで、認知の歪みやコンプレックスなどに気づいて、それを克服して視野を広げていくというものです。いわゆる恋愛・男女関係の教育分析という感じです。実際に恋愛観分析を受けられた方は11名と少なかったのですが、特に一番多かったのは男女別に次のことでした。実際の内容を変更して会話形式で簡潔に紹介します。(CO=カウンセラー、CL=クライエント)
■ 男性の場合
CL「以前、好きな女性がいたのですが、僕なんか相手にされないと思って諦めました」
CO「どうして、その女性から相手にされないと思ったのでしょうか?」
CL「その女性はとても可愛くて男性からとても人気がありますし、僕はイケメンではありませんから」
CO「よくわからないのですが、イケメンでないことと相手にされないということは何か関係があるのでしょううか?」
CL「だって、釣り合わないじゃないですか!?」
CO「何が釣り合わないのでしょう?」
CL「相手の女性はとても可愛い人なので、イケメンでない僕とはルックスのレベルが釣り合わないということですよ」
CO「なるほど、つまりそのようなとても可愛い女性が相手にするのは、イケメンの男性であると考えていらっしゃるわけですね?」
CL「世の中、そういうもんじゃないですか?」
CO「どうですかね!?人それぞれですから何とも答えられませんね。ところで、先ほどルックスのレベルが釣り合わないとおっしゃっていましたが、あなたと釣り合うルックスレベルの女性とはどのくらいだと思いますか?」
CL「難しい質問ですね・・・まあ、あまり可愛くない女性といえばいいのでしょうか・・・」
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・(しばらく無意識をえぐり出す会話なのでカットします)
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CO「あなたにとって恋愛はルックスが重要であり、女性をルックスで判断しているということではありませんか?」
CL「たしかにその通りだと気づかされました!」
CO「あなたがその好きだった女性とルックスを比較していたということは、あなた自身がその女性をルックスで選んでいたということになります」
このようなケースの男性は多くいるようです。美人やとてもキュートな(いわゆるルックスが良い)女性に好意を抱くと、すぐに自分のルックスを気にしてしまうということは、無意識にその女性をルックスだけで判断してしまっているということが多いのです。
■ 女性の場合
CL「今の彼氏が他の女の子とよく遊んでいるのですが、それが心のどこかで引っかかっていまして、私って心が狭いのかと思っています」
CO「心が狭いとはどういうことでしょうか?」
CL「彼氏はいろんな人と遊ぶことが好きなのですが、それを許容できていないところですね」
CO「具体的にどういうところが許容できないのですか?」
CL「やっぱり彼氏が他の女の子と遊んでいるなんていい気分ではありませんし、浮気とまではいかなくても不安になります」
CO「どのようにすれば、あなたはそれを許容できるようになると思いますか?」
CL「私が大人になるといいますか、包容力を身つければ許容できるようになると思います」
CO「あなたにとって包容力とはどういうことですか?」
CL「広い心を持ってどんなことでも感情的にならず冷静でいられることですね」
CO「それだと今は心のどこかで感情的になって冷静でない状態だということですか?」
CL「そうですね。心のどこかでやっぱり嫌だって気持ちがあったり不安になっています」
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・(しばらく無意識をえぐり出す会話なのでカットします)
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CO「結局あなたは他の女の子と遊んでいる彼氏さんが許せないのではないでしょうか?」
CL「たしかに・・・考えてみると私という彼女がいるのに他の女の子と遊んでいるなんて許せないことですね!」
CO「包容力があったとしても、人間ですから嫌なことは嫌ですし、許せないことはあると思いますよ」
このケースは女性に多く見られる恋愛依存症に陥っている可能性が高いといえます。お付き合いしている彼氏が他の女の子とよく遊んでいるというのは、普通に考えると特別な場合を除いて嫌な気分になって当然です。ところが恋愛依存症に陥った人は、それを認知の歪みから自分の包容力のなさなどと感じてしまうのが特徴といえます。恋愛依存症の詳しい説明については割愛しますが、恋愛カウンセリングにおいても女性の相談の多くがこの恋愛依存症でした。