近年、不登校の問題には発達障害や心の病が影響を与えているケースが多く見られるようになってきました。
発達障害とは生まれつき、脳の機能発達の偏りがある先天的な障害のことで、幼少期から行動面や情緒面に特徴がある状態です。そのため、社会生活に大きな困難をきたしてしまいます。日常的には異常な症状が見られるわけでもないため、周囲の人から気づかれにくいというのも特徴です。発達障害は病気というより特性という面から完治は難しく、薬物療法や訓練などで症状を和らげることはできます。しかし、発達障害だからといって悪いことばかりでなく、人より優れた才能を持っているという特性もあります。その特性を活かしていけるような方向に進むことができれば、よりよい人生を歩んでいける可能性もあります。
その他、不登校の要因になりやすいとされる最もよくみられる精神障害もいくつか紹介していきます。

ADHD(注意欠如・多動症)
ADHDとは注意欠如・多動症ともいわれている発達障害の一つです。忘れ物が多いといった不注意、じっと静かにしているしていることが苦手であったりする落ち着きのなさ、思ったことをつい口にしてしまうといった考えずに行動してしまうという特性があります。そのような特性を先生や友人から指摘されることによって、お子さんは自分が否定されている感覚に陥り、無気力になって不登校になってしまうケースがあります。
また、ADHDは睡眠障害を併発しやすいといわれています。睡眠障害になってしまうと入眠困難や過眠などの症状により、授業中の居眠りが問題になったり、昼夜逆転によって不登校になってしまうことがあります。
ADHDの症状は幼少期から表れると言われていますが、個人差があるため思春期になるまで気づかれないこともあります。
ASD(自閉スペクトラム症)
ASDとは自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群といわれており、発達障害の一つです。ASDの特徴として、対人関係が苦手、一つの物事にこだわり過ぎてしまう、音や匂いなどを過剰に反応してしまうなどといった症状が見られます。ASDのお子さんは、集団生活になじめず一人でマイペースに過ごすことを好みます。そういったことから周囲とのコミュニケーションがうまくとれず、対人関係のトラブルを起こしてしまうケースもあります。また、記憶力のかたよりがあることから学習面に困難を感じてしまうお子さんもいます。そういったことから学校生活が辛くなり不登校になってしまうケースがあります。
LD(学習障害)
LDとは「聞く」「読む」「話す」「計算する」能力に困難が生じる発達障害の一つです。人によって症状が異なるため、気づかれにくく診断も難しいとされています。LDの症状に気づかれないお子さんは、先生や両親から「もっとがんばりなさい」「勉強不足」などと指摘されることによって無気力になったり、人の話を聴いたり自分の考えを発言することの難しさによる対人トラブルが原因で不登校になってしまうケースがあります。
概日リズム睡眠障害
ひきこもなどにより昼夜逆転の生活リズムになると、極端に夜寝る時間が遅くなり朝寝坊になるといった睡眠相後退症候群という障害を引き起こしてしまうことがあります。その症状が悪化すると体内時計のリズムが外界と合わなくなってしまう概日リズム睡眠障害を引き起こし、社会・学校生活を過ごすことに困難が生じてしまいます。そのような症状から不登校になってしまうケースがあります。
特に昼夜逆転の生活リズムになっていると、元の生活リズムに戻すまでには時間がかかってしまいます。なかなか生活リズムを戻せない場合は、睡眠専門の医療機関へ受診するなどして、生活リズムの改善を試みるのがいいでしょう。
適応障害
適応障害とは学校環境に馴染めず拒否反応を起こしてストレスを抱えてしまう精神障害の一つです。真面目で完璧主義な人に起こりやすいといわれています。不安、頭痛、不眠、憂うつになるなどといった症状になり、過剰なストレスを感じることで、学校に行くことが困難に不登校になってしまうことがあります。
適応障害は主にその環境に対するストレスが原因ですから、ストレスを感じない環境に変化させることで症状が弱まります。適応障害の可能性が考えられる場合も、ちゃんと医療機関の受診を行って環境を変化させていく必要があります。
うつ病
近年、不登校問題で注目されているのが子どものうつ病です。うつ病は大人にだけ発症すると思われがちですが、子どもでも発症することがあります。子どものうつ病は大人に比べてわかりづらく、症状が酷くなってから発見されることが多いのです。子どものうつ病の症状として、イライラすることが多くなる、だらだらすることが多くなる、すぐ落ち込みやすくなるといった特徴があります。このような症状であるため、両親や学校の先生は「ただ怠けているだけ」「短気すぎる」と捉え、子どもを叱ってしまいます。しかし、うつ病の子どもにそのような対応をし続けると、症状はどんどん悪化して、不登校になってしまうことがあります。
分離不安
小学生低学年の不登校で最も多いとされているのが分離不安です。分離不安とは子どもが両親(特に母親)と離れることに不安を感じることです。両親から離れて学校生活を過ごすことに不安や恐怖心を感じてしまい、両親と一緒でないと登校できなくなったり、悪化すると不登校になってしまうことがあります。また、学校生活の中で、お子さんが我慢をして明るく振舞ったりしていると身体的症状が出ることもあります。
分離不安による不登校問題を解決させる方法はお子さんによってさまざまですが、症状が酷い場合は分離不安症や発達障害の可能性も考えられますので、医療機関へ受診する必要があります。
パニック障害
パニック障害とは突然、動悸、めまい、吐き気、息苦しさ、発汗、手足の震えなどといったパニック発作といわれる身体的症状があらわれることです。パニック障害のお子さんは、突然の発作に大きな不安を抱え、常に怯えている状態に陥るため、日常生活や学校生活に支障をきたします。そのような精神状態から不登校になってしまうこともあります。
パニック障害は医療機関に受診して薬物療法による治療方法と認知行動療法という心理療法を受けることにより、時間をかけながら完治していくことが可能とされています。