子どもの嘘と防衛機制

防衛機制とは受け入れがたい状況や感情に直面した時に、無意識的にその不安を軽減しようとして、自分の心を守ろうとする防衛反応のことで、精神分析で用いられている心理用語の一つです。
防衛機制という観点からみると、お子さんがウソをつくというのはこの防衛機制によるものだという捉え方ができます。子どものウソはご両親が「ウソをつくことはいけないこと」という注意をしたところで、それが効果的にあらわれるかどうかはお子さんによってさまざまでしょう。どちらかといえばご両親の子どもに対しるちょっとした行動の変化を表していくことで減少していくことがあるといえます。
ところで不登校のお子さんにもこの防衛機制がよく見られるようです。学校に行かない要因として、自分が傷つかない安全な避難場所なっているのが家庭である場合、お子さんは防衛機制によって自分の心を守っているといった捉え方ができます。そして、このような防衛機制により学校生活や家庭生活の中でトラブルが発生することも多く、それによって不登校になってしまったというケースもあります。ここでは不登校のお子さんによく見られる防衛機制について紹介していきたいと思います。

■ 抑圧
自分が受け入れられない苦痛な感情や記憶などを意識から無意識へと押し込んでしまうこと。
密かに好意を抱いている女子生徒が別の男子生徒に好意を抱いていることを知ったとき、その女子生徒に対する気持ちを忘れようとすることなどがあります。

■ 合理化
理由をつけて自分の正当化を保証したり、満たされなかった自分の欲求に対して適当な理由をつけて正当化しようとすること。
自分の非を両親や教師に強く責められたとき、なんとか自分の非をごまかそうとして言い訳をして正当化して逃れようとするなどがあります。

■ 逃避
苦しい状態から心理的に逃れることによって、不安をうち消すために自らを防衛すること。
学校の宿題をするのを忘れていた子どもが、学校を休んでしまうというという行動にでることなどがあります。

■ 置き換え
自分が抱いている感情や衝動をその対象ではなく、その代理となる人に対してその感情や衝動を向けること。
自分の父親に対して憎しみ抱いている子どもが、男子教師に対して憎しみを抱いたりすることで、欲求が満たされないと物を壊したりすることで気を晴らすといった行動にでることがあります。

■ 同一化
自分にとって重要な人と自分を同じようにみなすこと。その人の優れた能力や行動を、自分のものであるかのようにみなすこと。
芸能人の服装やしぐさを真似てみたり、生徒がお酒を飲んだりタバコを吸ったりして大人のようなふるまいをすることがあります。

■ 反動形成
あることを抑圧しているときに、それと正反対の行動をとること。
好きな女子生徒にわざと意地悪なことをすることなどがあります。

■ 退行
未熟な発達段階に戻って自分の欲求を満たそうとすること。「子ども返り」や「赤ちゃん返り」などといわれている。
不登校になっている子どもが、夜になると一人でトイレに行けなくなったり、一人で寝るが怖いなどといった幼児的な行動をすることがあります。

■ 知性化
受け入れがたい出来事や状況、感情に対して、知識を用いて頭で理解しようとする心の働きです。
好意を抱いていた女子生徒に振られてしまったときに、日本人男性の未婚率は数パーセントだから仕方ないとことだと、自分を納得させてしまうことなどがあります。

■ 投影
自分が抑圧している感情を、自分ではなく他の人が持っているように感じること。
自分が密かに好意を抱いている女子生徒がいたとして、それを適切な相手がその女子生徒に好意を抱いていると感じて、その相手に「君はあの女子生徒のどこがいいんだ」などと言いながら、相手を追いつめていくようなことを言うなどということがあります。

■ 代償・補償
自分が劣等感を持っていることに対して、他の事柄で優位に立つことで、その劣等感を補おうとすること。
運動が苦手な子どもが、勉強でいい成績をとるなど、他の面で優越することで運動が苦手な劣等感を補おうとすることなどがあります。

■ 昇華
欲求不満なことを、芸術やスポーツといった社会的に認められている高次的な価値を実現させることで満足すること。
ケンカばかりをしていた子どもが、ボクシングなどで世界チャンピオンになるといったことなどが昇華の一例としてあげられます。

このような防衛機制を抱いたお子さんに対して、話をしていくことで自分の感情に素直になり、ストレスや欲求を満たすための行動をカウンセラーと一緒に考えていくといった方法や、両親の方にもその症状に対して理解をしていただいて、お子さんの欲求が満たせるような行動をしていただくなど、あらゆる方法があります。

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